僕のまわりでこそ都市は激しく崩れさるべきだったのだ。

 一定の期間が経つと、(あるいはふと思いたって)読み直している何冊かの本のうちに、村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る』がある。
 そして毎回勇気づけられる。
 大丈夫、やっていける、と思う。

彼は地面を踏み、優雅に腕をまわした。ひとつの動きが次の動きを呼び、さらに次の動きへと自律的につながっていた。身体がいくつもの図形を描いた。そこにはパターンがあり、ヴァリエーションがあり、即興性があった。リズムの裏側にリズムがあり、リズムの間に見えないリズムがあった。彼は要所要所で、それらの複雑な絡み合いを見渡すことができた。様々な動物がだまし絵のように森の中にひそんでいた。中には見たこともないような恐ろしげな獣も混じっていた。彼はやがてその森を通り抜けていくだろう。でも恐怖はなかった。だってそれは僕自身の中にある森なのだ。僕自身をかたちづくっている森なのだ。僕自身が抱えている獣なのだ。

だってそれは僕自身の中にある森なのだ。
僕自身が抱えている獣なのだ。

神の子どもたちはみな踊る

神の子どもたちはみな踊る