僕のまわりでこそ都市は激しく崩れさるべきだったのだ。
一定の期間が経つと、(あるいはふと思いたって)読み直している何冊かの本のうちに、村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る』がある。
そして毎回勇気づけられる。
大丈夫、やっていける、と思う。
彼は地面を踏み、優雅に腕をまわした。ひとつの動きが次の動きを呼び、さらに次の動きへと自律的につながっていた。身体がいくつもの図形を描いた。そこにはパターンがあり、ヴァリエーションがあり、即興性があった。リズムの裏側にリズムがあり、リズムの間に見えないリズムがあった。彼は要所要所で、それらの複雑な絡み合いを見渡すことができた。様々な動物がだまし絵のように森の中にひそんでいた。中には見たこともないような恐ろしげな獣も混じっていた。彼はやがてその森を通り抜けていくだろう。でも恐怖はなかった。だってそれは僕自身の中にある森なのだ。僕自身をかたちづくっている森なのだ。僕自身が抱えている獣なのだ。
だってそれは僕自身の中にある森なのだ。
僕自身が抱えている獣なのだ。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/02/01
- メディア: 単行本
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